NEWS / TOPICS

2024年03月25日

神経系トレーニング

今回は、ケビンがインナー・マッスルの役割を解説してくれたものをまとめた。

筋肉が活動するとき、血中から脂肪酸、酸素(O₂)、グルコース(糖質)などが筋肉内に入り、その活動を続行することができる。例えば、有酸素運動をするときは、主に血中から脂肪酸、酸素(O₂)が筋肉内に誘導され有酸素運動を続けることができる。またウエイト・リフティングなどのときは、主にグルコース(糖質)、酸素(O₂)が筋肉内に誘導され、その動作を続けることができる。

そして、その活動を定期的に続けることで、【図1】のように脂肪酸、酸素(O₂)、グルコース(糖質)などを筋肉内により多く取り入れるのを可能にする酵素(タンパク質)が成長し、その活動をより長く、強く続けられる。

筋肉にはインナー・マッスル/アウター・マッスルの2種類がある。その体積(重量)の比率は1:1で、総数640個に対して、インナー・マッスル:アウター・マッスルは9:1(すなわち576:64)となる。





筋肉



代謝

一つひとつのインナー・マッスルに対するトレーニングはほとんど効果が無く、アウター・マッスルに対するウエイト・トレーニングが重要な役割を果たす。
通常のインナー・マッスル・トレーニングでは筋肉のサイズが小さいため、代謝を上げることはできないが、アウター・マッスル・トレーニングは筋肉のサイズが大きいため、効率良く代謝を上げることができる。【図2】



では、どのようにすれば、インナー・マッスルを使って代謝を上げることができるのだろうか?
インナー・マッスルの特性として、一つひとつの筋肉のサイズは小さいが、たくさんあるということ(筋肉の総数のうち90%がインナー・マッスル)が挙げられる。そして、それを可能にしてくれるトレーニングが神経系トレーニングだ。


神経系トレーニング

神経系トレーニングとは、すべてのインナー・マッスル(576個)を同時に作動させてアウター・マッスルへ繋げるので、すべてのアウター・マッスル(64個)も同時に作動できる。


フィットネスにおいては、現状スプリントが唯一の種目となる。


「日本のフィットネスには欠けているものが1つあります」
そう語るのは、日本のフィットネスを変えたと言っても過言ではない、パーソナル・トレーナー ケビン山崎だ。ケビンは自身が1981年にパーソナル・トレーナーとして活動をはじめ、多くのトップアスリートを手掛け、その経験を一般人と呼ばれる強度の低いアスリートにも活用できるメソッドを構築していった。

そのケビンが今、満を持して伝えるのが、フィットネスのあるべき姿だ。
以下、ケビンの言葉を借りて説明しよう。

「フィットネス」つまり、カラダの代謝を上げるためにトレーニングをすることをいかに効率よく、最大の結果へつなげるか、が重要なポイントとなる。全身を連動させながらトレーニングすることで、より多くの代謝を生み、その結果として脂肪燃焼を起こすことができる。通常のトレーニングは、各部位のアウターマッスル中心のトレーニングを組み合わせたものがほとんどで、全身を同時に連動させるトレーニングと比べて効率良く代謝を上げることは困難なため、脂肪燃焼効率も低くなる。

ここで言う、全身を連動させることとは、力の流れの始まりは母趾球であり、その力を股関節のインナーマッスルに繋げ、その力をさらに肩甲骨のインナーマッスルへと連動させる。そしてそのカラダの内側にあるインナーマッスルの力を外側のアウターマッスルに連動させ、パワーに変換させる。というわけだ。

そこで、身体運動の連動性を考えた場合、股関節の独立性が重要となる。股関節の独立性とは、左右の股関節をスクワット・エクササイズのように同時に使うのではなく、左右別々に使うということだ。すなわち股関節の独立性とは、左右の母趾球の独立性を意味する。その結果、トレッドミル・エクササイズが最適なものであると言える。



トレッドミル・エクササイズ

トレッドミルを使用したエクササイズは、スプリント/ダッシュを意味する。では、なぜスプリント/ダッシュが重要なのだろうか? 引き続きケビンの話を元に解説してみよう。

ジョギングをする目的は健康管理であると大抵の人たちは思う。しかし、スプリント/ダッシュとなると、一般の人たちにとって何の目的に実施するのか明確ではなく、また、あまり実施している姿を目にする機会もない。
例えば、スポーツの世界で、スプリント/ダッシュというと、主に神経系トレーニングを意味する。神経系トレーニングとは、より多くの不随筋であるインナーマッスルをカラダの動作に導入させ、随意筋であるアウターマッスルと合わせてその動作のパワー・アップ、そしてキレ等を向上させることだ。

不随意筋の代表格である大腰筋/腸骨筋を向上させるためには、スプリント/ダッシュ・トレーニングが最適であり、坂道で行うことでより強度は増す。一般の人たちも、この神経系トレーニングとしてのスプリント/ダッシュ・トレーニングを導入することで、ゴルフなどのスポーツ分野だけでなく、日常生活にも大きな影響を与え、代謝を上げることに繋がる。またそれに加え、動作に対する判断力やキレも向上し、人生の密度を上げることができるだろう。

今、私たちはただ単に引き締まったカラダや健康的な肉体を求めるのではなく、動きの良さが所作に繋がり、また、自分自身を表現する大切な要素になってきている。アスリートのトレーニング強度を一般人へ変換させながら導入することは、現代社会のフィットネスの定義をまさにコンプリートしているものではないだろうか?
ケビン山崎がこのメソッドを日本中に広げたい。そんな志を我々に身をもって教えてくれる日もそう遠くはないと思う。








2024年01月25日

SprintのためのTraining

ケビン山崎がパーソナル・トレーニングを日本に持ち込み、トレーニング・ジム「TOTAL Workout」を東京に設立してから23年が経つ。その間トレーニング結果として多くの人がなりたいカラダを手に入れてきた。

当時ジムに来る人は、『痩せたい』『筋肉をつけたい』といった体型に関するトレーニング結果を求めていた。そしてウエイト・トレーニングと食生活の改善、正しいボディケアを施すことで、短期間でそれを手にすることができた。
時を同じくして、ケビンは常にアスリートに求められるパフォーマンス向上のためにトレーニングを提供していたこともあり、ジムに来る一般の人達においても、ただ体型の変化を得るだけではなく、つくった筋肉を動かせるようになっていった。例えるなら、座っている姿勢、立ち姿が整い、カッコよい歩き方などを習得できる。時代が画像から動画へ変化する今、やっとこの「動き」の美しさこそが、男女を問わず「かっこいい」の定義になったのではないだろうか?

以前のNEWS/TOPICSでも紹介したように、ケビンは随分前からこの動きにこだわりを持っていた。つまり、トレーニングをする最終ゴールは体型という器をつくるだけではなく、動きを取り入れることにある。それを『神経系トレーニング』で可能にしたのだ。

『神経系トレーニング』とは2つ以上の筋肉を順番に連動させることだ。中でもケビンはSprintに目を付けた。運動の中で最も強度が高い動きであり、これまでの人生においてほとんどの人が体験したことのある動きであるからだ。Sprintがうまくなることで、神経系は進化する。

今回は、そのSprintの動きをより良くするために活用される2種類のトレーニングについて述べたい。





【 ピラティス 】

1つはピラティスだ。『TOTAL Workout』にはオリジナルのピラティスがあり、リフォーマー、キャデラックという器具を用いて機能解剖学の見解からカラダの使い方や背骨を動かし、姿勢改善、カラダの中心軸をつくることを行うトレーニングである。
リフォーマーはスプリングを使用することで負荷の調整を行い、マットは自体重での負荷調整、キャデラックはアプローチの変化による負荷調整が行える。これらは、ケビンが提唱するSprint(ダッシュ)においても、必要なインナーマッスル(下腹部、内転筋、腸腰筋、菱形筋、腹斜筋)をレベルに応じてアプローチしていき、最終的には総動員させてカラダをダイナミックに動かすことを可能にしている。

代表的な種目は下記の2つだ。


トゥ・シングルレッグ


Sprintで必要なグルーとのプッシュから腸腰筋で引き上げる動きを、リフォーマーの台を使用することで腹横筋の意識を高め、スプリングが母指球でプッシュする感覚を高めてくれるため、この2つ以上の筋肉を連動させて使う練習が容易となる。



ロールアップ・シングルレッグ with ワンハンドロウ


Sprintの際に下半身から上半身を連動させるために必要な筋肉をリフォーマー上でスプリングという負荷を用いることで、腸腰筋の意識を高め、上半身では腰方形筋を働かせつつ菱形筋で引く練習が容易となる。




【 ヨガ 】

もう1つはヨガ。ヨガは本来静止したポーズ(アーサナ)をとることで、心を整える修業としても用いられる。Sprintのトレーニングを底上げしてくれる柔軟性やバランス力、集中力を養う。ケビンはこれをただの底上げではなく特徴を活かし、Sprintのトレーニングにおけるウォーミングアップの最適形にした。

代表的な種目は次になるが、Sprintで使用する筋肉の可動域を集中的に広げるとともに、アーサナを止まらず取り入れ、動きをつなげていくことによってしなやかな動きをつくり出し、これから取り組むSprintのウォーミングアップになる。


ハーフムーン ポーズ


Sprintの動きでは股関節内外旋など3Dの動きが必要になってくる。このアーサナはSprintにおける一瞬の動きを抜き出し、股関節の内外旋を意識的に行いながらバランスをとることで、より走りで必要な筋肉の意識付けと安定感が高まる。



シングルレッグエクステンション


Sprintの動きで地面をプッシュする際に臀部を使うが、臀部を上手く使えない原因は骨盤の前傾にある。ヨガのアーサナで骨盤の後傾を保ったまま臀部に刺激を入れ、臀部を使ったプッシュの意識付けを行う。





ピラティスやヨガ、それぞれのトレーニングの特性を最大限に活かし、Sprintに特化した役割を持つものへ変化させることは、最短で最大の結果を求めるケビンらしいメソッドだと感じた。
目的に向かって効率の良さを見出せるのも、長年積み上げた知識とエビデンスに基づくものであって、トレーニングは流行りや人気ではなく、欲しい結果に向けて何をアレンジしていくか?が正解なのだと思う。


ケビン山崎はフィジカルを高めることを何よりも得意とするパーソナル・トレーナーだ。しかし、それはただ単に筋力を高めることや、アジリティ、パワーなどに特化したものではない。それぞれのスポーツに応じたトレーニングと、その選手に合わせてカスタマイズが施された唯一無二のものだ。

例えば、記憶に新しいSASUKEにおける武尊選手のトレーニングは、SASUKEという競技に適したフィジカルトレーニングを提供する。筋力ではなく、パワーエンデュアランスが必要になるこの競技では、UCTをメインに行う。

UCTとはアルティメットコンバイントレーニングの略で、強度が高い最強トレーニングの組み合わせを意味する。このトレーニングは、以前から武尊選手が必ずといってよいほど取り入れていた。格闘技は心拍が乱れた環境下で、最大のパワーを出す必要があるためだ。とケビンは説明してくれた。

より試合に近い状況をトレーニングにおいてつくることで、心肺機能の向上やパワーを引き出すことができるという。SASUKEにおいても様々な環境下でパワーを出す必要があり、UCTはすべてを網羅しているトレーニングだ。

今回は、トレーニングの内容を少し紹介することにしよう。




● STT(スーパー・トレッドミルトレーニング)
「スーパー・トレッドミル」を使用し、坂道をダッシュするときのカラダの使い方を学ぶことで、脳から筋肉への指令を出す神経伝達経路を良くし、2つ以上の筋肉を順番に使う能力(連動)を向上し、キレのある動きや爆発的な瞬発力を生み出すトレーニング。武尊選手はその中で最も強度の高いChris Carterを行っている。





● マルチヒップ(ハイニー、キックバック)
内転・外転筋、腸腰筋、大臀筋の強化および意識付けを重さが邪魔する環境下で行う。フォームの安定感を生み出し、ダッシュ時の爆発的な脚の引き上げ、地面を蹴る力を向上させるトレーニング。

・ハイニー
爆発的な脚の引き上げを向上させるトレーニング。
・キックバック
爆発的な地面を蹴る力を向上させるトレーニング。





● カーブ・トレッドミル
ダッシュの最高速度を上げるトレーニング。
トップスピード(MAX約30㎞/h)で3秒×5本





● ラダー、ミニハードル、ハードルジャンプ、ボックスジャンプ
複数の種目を組み合わせたクイックネスを向上させるトレーニング。武尊選手の場合、強度を上げるために4つを組み合わせて行っている。最終種目のボックスジャンプにおいては、さらに強度を上げるために、通常2段で行うところを3段にしてレベルを上げている。





● MHJP(マルチヒップジョイントボード)を使用したトレーニング
四肢の連動性を高めるトレーニング。両手両足をタイミングよく動かすことによって、最大限のスピードとパワーを手に入れることができる。





● Versa Pulley
VersaPulleyは Force(力)とVelocity(速度)を組み合わせたResistance(抵抗)を利用し、パワーにおける神経系の向上を可能にするトレーニングマシン。パワーにおける神経系を効果的に向上させることができる。動作ごとに出したパワーが数値として可視化されるため、1回の出力に全力を注ぐことができる。また、このトレーニングでは前後左右の出力を向上させることができる。





● プルアップ(プルアップ3カインズ プルアップ&クラップ)
全身を使ったチンニングの種目で、瞬間的な出力の向上。主に上半身強化のために行う。

・プルアップ3カインズ
順手、坂手、ワイド、ナローなどの中から3種類を連続して行う。
・プルアップ&クラップ
カラダが持ち上がったタイミングで手を叩く。背中だけでなく全身を使わないとできない強度の高い種目。





● Abdominal Circuit
パフォーマンスに直結する腹筋出力の向上。最も強度の高いCOREのトレーニング。








東京都内にあるトレーニング・ジム 「トータル・ワークアウト」を覗くと、多くの人が熱心にカラダを鍛えている。
トレーニング・ジムという名の通り、それぞれがパーソナル・トレーナーと共に、しっかりとトレーニングに向き合う姿勢が特徴的だ。

ケビン山崎が日本に「トータル・ワークアウト」を設立したのが2001年。それ以来、進化し続けるトレーニングは今や3450通りにもなるという。

そのトレーニングを一つ残らず落とすことなく技術として身につけ、日夜お客様に伝え、指導しているのが、トータル・ワークアウトのパーソナル・トレーナーだ。
彼らは、入社した時から決められたカリキュラムの元、トレーナー研修を受講する。中には、自分自身のカラダの変化を評価される「3週間トレーニング」の実施もある。とにかくこの期間はひたすらトレーニングと食生活の改善を行う。
自分自身の体験を元に指導するトレーニングは、何と言っても説得力がある。そして、指導経験を重ねていくトレーナー達は、3年間で一通りのトレーニングを学び、指導許可をもらえるよう取り組む。
3年以降もブラッシュアップや進化したトレーニングをケビンが直接指導する「パーソナル・トレーナー養成講座」として学び続ける。

習得が難しいもの、指導が困難なものも多くある。さぞかし緊張感があるだろうと覚悟してその様子を見学させてもらうことになった。
この日はベーシックなカラダの使い方を学ぶ日だった。






クイックリフトといって、2つ以上の筋肉を順番に使う、神経系のリフティングだ。高重量のおもりをただ挙上するために必死になるのとは違っていて、筋肉の使い方にこだわったリフティングだった。

そこにいるトレーナー達はみんな楽しそうだった。ああでもない、こうでもないと意見を交わしながら練習をしている。誰かが「今日はここまでにしよう」と言わなければ永遠に行っていそうなくらい。彼らはトレーニングが好きなんだなと一目でわかった。

きっと職業になるといろんなことが起きて、たくさんの気持ちになるだろう。それでも、彼等の根底には「トレーニングが好きである」ということが存在しているのだろう。
そして、こんなトレーナーにカラダを診てもらえるお客様と呼ばれる生徒たちは幸せだろうなと思った。

ケビンが今回パーソナル・トレーナーのみんなに伝授していたトレーニング内容は、素人の自分が聞いていても、面白く、非常に興味がもてるものだった。中でも印象に残ったのは「すべてのスポーツに適用できるパフォーマンス向上の施策」だ。

これはまた、次の機会に詳しく説明することにしよう。








我々日本人が「パーソナル・トレーナー」という言葉を耳にしたのはいつのことだろう?
それはまだ「ボディメイク」という言葉も聞きなれない時代、「肉体改造をマンツーマンで行うトレーナー」がいるというのを知った頃だ。 

遡ること20数年前…。 現代のようにインターネットがまだ情報収集の主流になく、伝える手段がマスメディアのTVや雑誌、新聞だった頃、ケビン山崎はここ日本にパーソナル・トレーニング・ジム 「TOTAL Workout」を設立した。
それ以来、スポーツ選手や著名人を皮切りに多くの人たちがジムへ通うようになり、今や日常的にその重要性までが理解されるようになった。一種の社会現象とも言えるであろう。

この環境の中心にいるのは、あくまでもトレーニングを実施する人であることは間違いないが、常に隣で結果を導き、サポートする役目を担う「パーソナル・トレーナー」の存在があった。
ケビン自身もパーソナル・トレーナーとして活躍の場を広げ、ジムには多くの弟子達が集い、日本一のパーソナル・トレーニング・ジムを築いていった。
カラダの変え方をこれといって知らない日本人にとって、ケビンが打ち出したカラダづくりは実に画期的なものだった。年月とともにカラダづくりが多くの人に浸透し、日常的なものになりつつある現在、その手法は「TOTAL Workout」のメソッドひとつだけではなくなった。

そもそも、カラダづくりを含むフィットネスというものは、健康な人が取り組むものであることが定義なので、やや不調があったとしても病気にカテゴリーされない限り、医師の処方箋が必要ではない。
そのことからも、フィットネス業界に存在する「パーソナル・トレーナー」には国家資格がない。つまり誰でもなれるということだ。カラダづくりの専門家であるはずの「パーソナル・トレーナー」の地位向上が実現しないのも納得できる。
ただ、果たしてそれでよいのだろうか?

人生100年時代と言われる今だからこそ、人生をどう生きるか、ということはとても大事になってくる。切っても切れないのが「健康」だ。
病気じゃないから良しとする時代はとっくの昔に終了し、今となっては質の高い毎日を積み上げていく人生がスタンダードになろうとしている。パーソナル・トレーナーはそれを一人でも多くの方に届けることだと思う。ケビンは強くそのことを訴えてきた人だ。

そんなケビンは、1994年より指導者の教育に着手してきた。
日本人の体育学部を専攻している学生たちに将来の職業として「パーソナル・トレーナー」の存在を伝え、研修を始めた。
東京にトレーニング・ジムを設立して以降、2016年には満を持して日本体育大学とパートナーシップを結び、パーソナル・トレーナーの養成講座を開講した。コロナ禍で一時休講を余儀なくされたが、トータル・ワークアウトのパーソナル・トレーナーは研修という形で、以前と変わらず講義を受講することができる。

日々クライアントと実践する時間はもちろん大切ではある。しかし、こうして理論を学びトレーナー自身が成長し続ける環境があるというのは、ジムへ通う人々にとって安心を得られることだろう。
そのときの感覚や感情でトレーニングを組み立てるのではなく、しっかりとした理論とエビデンスのもと、「効率の良さ」を徹底して学ぶ。
そんなトータル・ワークアウトのパーソナル・トレーナーは質が良い。
そう言われる理由はここにあるのだろう。











今回は、前回に引き続き新しいプログラム STRIKE ARTS PROGRAM 【3D】 について詳しく説明することにしよう。

このプログラムは格闘技において、パンチとキックという大きく分けて2つの攻撃を元に構成されている。

このプログラムの開発者ケビン山崎は言う。「プロのアスリートが無意識にコントロールしている多くの技術をバイオメカニクス的に解説し、それを理解することで、一般の方やアマチュアのアスリートたちにも広く役立つことがあります。もちろんそれはプロのアスリートも例外ではなく、スランプに陥った際、回復への糸口となることは間違いありません。股関節のローテーションにおいて、インナーマッスルを正しく作動させることを目的としたメソッド Athlete Body Make Program をベースとし、格闘技におけるパンチとキックに応用させたSTRIKE ARTS PROGRAM 【3D】は、それぞれのパワーやキレの向上が期待できます。それだけではなく、野球のピッチングでいう球種に当たるパンチやキックを、変則的なものにできる技術の習得にもつながります」と。

プロアスリートとトレーニングを積み上げてきたケビン山崎ならではの観点から、一般的に健康を目的としてトレーニングジムに来る顧客でも、役立つカラダの使い方を学ぶヒントがここにあるかもしれない。

このプログラムは、下半身の力を上半身にうまく連動させるために、上半身の下部つまりLower Torsoの使い方を分かりやすく導入すること(クランチ)にフォーカスしたプログラムになっている。主に股関節のローテーションをする際に、一旦骨盤を前傾させて内旋筋群と外旋筋群を作動、ほぼ同時に腰方形筋を使ってクランチする(側屈)。その効果が出力される方向に力が行きはじめ、一瞬戻って、また出力されるという小さな動きが入る。これがパワーや安定感、キレにつながり、使い方次第では動きに変則感を与えることが可能になるということだ。

ここからは、パンチではストレートとフック、キックではハイキックを例にして説明しよう。



【パンチ】

Straight/Hook
   ※オーソドックス
Straightをバイオメカニクス的に分析し、筋肉の連動を意識的に行うため、VPX(チューブ)とKnee strapを使用する。これらは、前方への動きをわざと制御し使用部位を意識しやすくするという特徴がある。感覚的にはねばりを感じ取ることが可能。それらで得られるものは、股関節のパワーと安定性の向上になる。
※オーソドックス
Straightをバイオメカニクス的に分析し、筋肉の連動を意識的に行うため、VPX(チューブ)とKnee strapを使用する。これらは、前方への動きをわざと制御し使用部位を意識しやすくするという特徴がある。感覚的にはねばりを感じ取ることが可能。それらで得られるものは、股関節のパワーと安定性の向上になる。

For Power
後方(右)股関節にVPXとKnee strapを装着
後方(右)股関節に重心を乗せ、Lower Torsoをクランチ
後方(右)股関節を内旋筋群によって前傾させ、ほぼ同時に腰方形筋でクランチしながら右股関節で床方向にプッシュ。そして体重を前方(左)股関節に移動し、前方(左)のLower Torsoをクランチさせた力をStraightにつなげる。

For Stability
前方(左)股関節にVPXとKnee strapを装着し内旋/外旋時の使用筋肉意識の向上とプッシュ時にテンションをかける。プッシュの意識をより高めるためには、KOHの使用もおすすめ。この動きが良くなると、動きがタイトかつシャープになる。





【キック】

High Kick
   Sprint Cordを使用。
軸足は床反力を利用し、股関節を外旋させる。軸足側の肩甲骨は外旋、反対側の肩甲骨は内旋させる。蹴る脚の付け根から突き出すようにしてKickをする。※Sprint Cordは斜め下から引っ張るようにする。
Sprint Cordを使用。
軸足は床反力を利用し、股関節を外旋させる。軸足側の肩甲骨は外旋、反対側の肩甲骨は内旋させる。蹴る脚の付け根から突き出すようにしてKickをする。※Sprint Cordは斜め下から引っ張るようにする。

上記のように、パンチとキック時に使用する筋肉を正しく意識することで、パワーアップや安定性、変動的な動きが可能となり、攻撃に幅を持たせることができる。
紹介したのはごく一部だが、自分自身の癖やうまくいかないポイントを解明してもらい、それぞれのエクササイズを行うことで、確実に成長していくことができるだろう。


2023年08月25日

STRIKE ARTS PROGRAM 【3D】

これまでにもケビン山崎はアスリートのトレーニングを一般の人にも推奨してきた。「強度の低いアスリート」として位置づけられた一般の人というカテゴリーは、カラダの使い方を進化させることで、今よりもワンランク上の日常を過ごせるようになるということは言うまでもない。
中でも、自分自身が趣味として続けているスポーツのパフォーマンス向上は分かりやすいベンチマークとなり、同時にやる気を向上させるため、我々のような一般的なスポーツ愛好家としては、トレーニングに取り組む明確な理由が成立する。自分自身のカラダの使い方を理解し、アスリートレベルまでその能力を引き上げたいという考え方になる人も少なくはない。

ケビンのクライアントはトレーニングの特性上、格闘家が多く募るようになった。筋力、瞬発力、持久力、コーディネーションなど高いレベルで全てを必要とする格闘技は、アスリートのみならず、人間の持つフィジカルと直結しているといっても過言ではないだろう。そこでケビンは、長年の経験とプロアスリートのエビデンスからなる『STRIKE ARTS PROGRAM 【3D】』を開発した。全6回というコンパクトなプログラムだが、誰でも受講できるというわけではない。 ケビンが提案する別のプログラムに 『Athlete Body Make Program』というアスリート向けにつくったトレーニングを一般の方へ提供する上級者向けのプログラムがある。この「アスリートボディを目指す」つまりは、カラダの使い方に特化したトレーニングを受講した方に参加の権利があるというのだ。

それでは、『STRIKE ARTS PROGRAM【3D】』について解説しよう。

プログラムの名称に【3D】という言葉が含まれているように、格闘技における動きを3Dにて動作分析することで、基準値と自分との差を明確にし、取り組むべきトレーニングのチョイスに役立てることが目的となる。
このプログラムで得られるトレーニング効果は、パンチとキックにおける打撃力の向上。パンチにおいては、下半身から上半身へ、キックにおいては上半身でいったんつくり出した力を下半身へ戻すという工程を通る。その過程では、骨盤に直結している部分(腰方形筋)を使うことが重要ポイントとなるが、これはカラダを側屈させることでしか実現できない。この動きが見落とされがちだという。

これらの動きを確認するには、立体的な指標でみる必要性がある。平面だと確認することはできない。用いる3D測定器はXsensといって、動きを立体的に可視化して数値化できる。

測定された数値は基準値に比べてどのくらいの差があるのか?を瞬時に解読可能で、トレーニングの方向性を明確にしてくれる。
劣る部分が理解できたら、補強のためにエクササイズを実施する。ケビンは長年ありとあらゆる格闘家とトレーニングを実施してきた。そのエビデンスを元に構築されたパンチとキックそれぞれのドリルは、すべてVPX、shoulder harnessを使用するものとなっている。
6回から成るプログラムの初回と最終回には、プロの格闘家が同席し、動きの確認をしてくれる。よってスキルへの変換をダイレクトに実行可能というわけだ。





次回のTOPIX記事では、より詳しくSTRIKE ARTS PROGRAM 【3D】を解説します。

ここでは前回に引き続き、ケビン山崎が近年のトレーニングを解説し、パーソナル・トレーナーの未来を予測します。

(前回の記事“ケビン山崎が語る 「パーソナル・トレーナーの歴史と未来予想図 ①」”はこちら





【HISTORY(近年におけるムーブメント)】

1990年代半ばのアメリカでは、特に西海岸を中心にNFL/AFCやNBA、MLBなどのスポーツの人気に拍車がかかり、ほかにも格闘技(UFC)も注目を集めるようになりました。そして、これらのスポーツ界において、ウエイト・トレーニングブームがやってきます。
やがて、アスリートたちは増強させた筋肉を持ちながらも優れた動きができるカラダにするために、「神経系トレーニング」を取り入れるようになりました。
しかし、2010年代初めにはそのブームに陰りがみえ始めるという、これまでと同じような現象が繰り返されました。

アメリカのスポーツ界では、その頃からMLBは「Statcast」や「TrackMan」、NFLやNBAもそれぞれ独自のシステムを用いて、ボールや選手の動きを高速かつ高精度に分析する取り組みが始まりました。この動向はさらに加速し、2020年代には選手の動作を3D計測する技術が開発される段階にまで発展しています。



2000年代

スポーツ業界にウエイト・トレーニングが取り入れられる
神経系トレーニングが開発され、導入される







↓ ↓ ↓
2010年代

スポーツ界には、ボールや選手の動きを高速、高精度に分析するソフトが導入される



↓ ↓ ↓
2020年以降

インナーマッスルの研究が始まり、計測も3Dへと進化








【今後の日本におけるフィットネスの展開】

ウエイト・トレーニングだけを行い、アウターマッスルばかりにアプローチしているようでは、もはやこの業界では通用しません。
下半身は下半身だけ、上半身は上半身だけと分けてトレーニングを行うのではなく、下半身から上半身への連動性を高めるトレーニングが重視される時代になっています。
つまり、下半身から上半身への連動や股関節のインナーマッスルの使い方など、インナーマッスルとアウターマッスルの関係性を、より立体的に考えることが重要となっています。

フィットネスにおいても、このような動きが重要であることは容易に想像されます。
単に筋肉を鍛えるだけでは、姿勢を改善したり、躓くのを防いだりすることはできません。実際には、神経伝達を向上させること―― つまり、神経系のトレーニングを行うことで、パフォーマンスが上がるのです。

パフォーマンスの向上は、筋肉量の増加と比べて日々の感覚で確認しにくいため、モチベーションを維持して成果を出すためには、可視化や数値化することが必要です。
そこで役立つソリューションが、動作分析や解析です。これらはトップアスリートだけのものではなく、今や私たちの日常を充実させるための重要なツールになりつつあります。







1980年代のアメリカでは、ハリウッドスターやスポーツ選手などの特別な人が自身の職業のために取り組み始めたカラダづくりが話題を呼び、専属のトレーナーを付ける「パーソナル・トレーニング」が生まれました。
後に私の職業となる「パーソナル・トレーナー」は、その専属のトレーナーを指します。私も自らのカラダづくりを通じて自信を得たり、健康面での恩恵を受けたりすることで、活動の幅が広がったことを実感してきました。

アメリカにおけるフィットネスは、ビジュアルの変化を追求することからスタートしましたが、高額な医療保険制度の後押しもあり、健康産業の大きな柱として花開きました。フィットネスは多くの人々におけるライフスタイルの一端に存在するものとなり、特別なものから日常的なものへと進化を遂げてきたのです。

それは日本でも同様です。2000年にアメリカからパーソナル・トレーニングが上陸し、20年の歳月を経て、一般化するとともにパーソナル・トレーナーという職種が世の中に認知されるようになりました。私が「パーソナル・トレーニング」を日本に持ち込んでから、それが社会現象として定着するまでにはそれほど時間はかかりませんでした。カラダづくりに取り組む人が増え、健康志向が高まる中で、今なおパーソナル・トレーナーの数は増加し続けています。
しかし、一方で対象とするクライアント(顧客)が健常者であることから、パーソナル・トレーナーは専門家としての資格を持たずとも、その指導に携わることができます。そのため、パーソナル・トレーナーは、個人の意思次第で職業として成り立っているというのが現状です。

フィットネスの先進国といわれるアメリカは、日本よりも約10年先を行っているとされてきました。しかし、私の見解では、今やその差は3~5年程度に縮まっていると思います。方向性は間違っていなかったといえるでしょう。だからこそ、私たちは今後もアメリカのフィットネスのトレンドを未来予想図として捉えながら、日本に合わせたフィットネスを創り出していきたいと考えています。





【HISTORY(USA)】

アメリカの1970年代といえば、女優のジェーン・フォンダの時代です。1971年の『コールガール』、『帰郷』、『チャイナ・シンドローム』などのヒット映画を連発し、エアロビクスダンスを全米中に広めた第一人者です。当時のウエイト・トレーニングといえば、アーノルド・シュワルツェネッガーに代表されるボディビルダーの間でのみ行われるものでした。
しかし、流行は必ず下火になるものであり、1980年に入るやいなやエアロビック・エクササイズは定番化されたものの、その勢いはウエイト・トレーニングの方向へと移っていきました。ウエイト・トレーニングは次第にボディビルダーたちだけのものではなくなり、ハリウッド映画界への進出も手伝って大きく注目され、1990年代半ばには野球やバスケットボールなどのスポーツ界にも広がっていきました。
この頃のハリウッド映画では筋肉系俳優によるアクション作品が非常に人気でした。代表的なものとして、シュワルツェネッガー主演の『ターミネーター』シリーズや『コマンドー』、シルヴェスター・スタローン主演の『ロッキー』シリーズや『ランボー』シリーズなどがあります。このジャンルは1990年代半ばまで盛んでした。


1970年代

空前のエアロビクスブーム
『有酸素運動が主流』


↓ ↓ ↓
1980年~1990年代序盤

ウエイト・トレーニングでMuscle Bodyが人気に
『無酸素運動が主流』










【HISTORY(JAPAN)】

日本のフィットネスシーンでは、1970年代から1980年代にかけてフィットネスクラブの三種の神器といって、どのクラブへ行っても「スタジオ、ウエイト・トレーニング、水泳」の3つが中心でした。1990年代には、その中でもスタジオのエアロビクスダンスが主要なエクササイズとなっていました。 そして2000年に入るやいなや、ウエイト・トレーニングがTOTAL Workoutを中心にブームとなり、野球などのスポーツ界にも大きな影響を与えるようになりました。そこで中心的な存在となったのが「パーソナル・トレーナー」です。


1970年代

三種の神器(スタジオ・ジム・プール)が揃うフィットネスクラブが出現する






↓ ↓ ↓
1990年代

エアロビクスが人気を集める

↓ ↓ ↓
2000年代

ウエイト・トレーニングブームで『パーソナル・トレーニング』がスタート








ケビン山崎が語る 「パーソナル・トレーナーの歴史と未来予想図 ②」 へ続く


NEWS / TOPICS

2024年03月25日

神経系トレーニング

今回は、ケビンがインナー・マッスルの役割を解説してくれたものをまとめた。

筋肉が活動するとき、血中から脂肪酸、酸素(O₂)、グルコース(糖質)などが筋肉内に入り、その活動を続行することができる。例えば、有酸素運動をするときは、主に血中から脂肪酸、酸素(O₂)が筋肉内に誘導され有酸素運動を続けることができる。またウエイト・リフティングなどのときは、主にグルコース(糖質)、酸素(O₂)が筋肉内に誘導され、その動作を続けることができる。

そして、その活動を定期的に続けることで、【図1】のように脂肪酸、酸素(O₂)、グルコース(糖質)などを筋肉内により多く取り入れるのを可能にする酵素(タンパク質)が成長し、その活動をより長く、強く続けられる。

筋肉にはインナー・マッスル/アウター・マッスルの2種類がある。その体積(重量)の比率は1:1で、総数640個に対して、インナー・マッスル:アウター・マッスルは9:1(すなわち576:64)となる。





筋肉



代謝

一つひとつのインナー・マッスルに対するトレーニングはほとんど効果が無く、アウター・マッスルに対するウエイト・トレーニングが重要な役割を果たす。
通常のインナー・マッスル・トレーニングでは筋肉のサイズが小さいため、代謝を上げることはできないが、アウター・マッスル・トレーニングは筋肉のサイズが大きいため、効率良く代謝を上げることができる。【図2】



では、どのようにすれば、インナー・マッスルを使って代謝を上げることができるのだろうか?
インナー・マッスルの特性として、一つひとつの筋肉のサイズは小さいが、たくさんあるということ(筋肉の総数のうち90%がインナー・マッスル)が挙げられる。そして、それを可能にしてくれるトレーニングが神経系トレーニングだ。


神経系トレーニング

神経系トレーニングとは、すべてのインナー・マッスル(576個)を同時に作動させてアウター・マッスルへ繋げるので、すべてのアウター・マッスル(64個)も同時に作動できる。


フィットネスにおいては、現状スプリントが唯一の種目となる。


「日本のフィットネスには欠けているものが1つあります」
そう語るのは、日本のフィットネスを変えたと言っても過言ではない、パーソナル・トレーナー ケビン山崎だ。ケビンは自身が1981年にパーソナル・トレーナーとして活動をはじめ、多くのトップアスリートを手掛け、その経験を一般人と呼ばれる強度の低いアスリートにも活用できるメソッドを構築していった。

そのケビンが今、満を持して伝えるのが、フィットネスのあるべき姿だ。
以下、ケビンの言葉を借りて説明しよう。

「フィットネス」つまり、カラダの代謝を上げるためにトレーニングをすることをいかに効率よく、最大の結果へつなげるか、が重要なポイントとなる。全身を連動させながらトレーニングすることで、より多くの代謝を生み、その結果として脂肪燃焼を起こすことができる。通常のトレーニングは、各部位のアウターマッスル中心のトレーニングを組み合わせたものがほとんどで、全身を同時に連動させるトレーニングと比べて効率良く代謝を上げることは困難なため、脂肪燃焼効率も低くなる。

ここで言う、全身を連動させることとは、力の流れの始まりは母趾球であり、その力を股関節のインナーマッスルに繋げ、その力をさらに肩甲骨のインナーマッスルへと連動させる。そしてそのカラダの内側にあるインナーマッスルの力を外側のアウターマッスルに連動させ、パワーに変換させる。というわけだ。

そこで、身体運動の連動性を考えた場合、股関節の独立性が重要となる。股関節の独立性とは、左右の股関節をスクワット・エクササイズのように同時に使うのではなく、左右別々に使うということだ。すなわち股関節の独立性とは、左右の母趾球の独立性を意味する。その結果、トレッドミル・エクササイズが最適なものであると言える。



トレッドミル・エクササイズ

トレッドミルを使用したエクササイズは、スプリント/ダッシュを意味する。では、なぜスプリント/ダッシュが重要なのだろうか? 引き続きケビンの話を元に解説してみよう。

ジョギングをする目的は健康管理であると大抵の人たちは思う。しかし、スプリント/ダッシュとなると、一般の人たちにとって何の目的に実施するのか明確ではなく、また、あまり実施している姿を目にする機会もない。
例えば、スポーツの世界で、スプリント/ダッシュというと、主に神経系トレーニングを意味する。神経系トレーニングとは、より多くの不随筋であるインナーマッスルをカラダの動作に導入させ、随意筋であるアウターマッスルと合わせてその動作のパワー・アップ、そしてキレ等を向上させることだ。

不随意筋の代表格である大腰筋/腸骨筋を向上させるためには、スプリント/ダッシュ・トレーニングが最適であり、坂道で行うことでより強度は増す。一般の人たちも、この神経系トレーニングとしてのスプリント/ダッシュ・トレーニングを導入することで、ゴルフなどのスポーツ分野だけでなく、日常生活にも大きな影響を与え、代謝を上げることに繋がる。またそれに加え、動作に対する判断力やキレも向上し、人生の密度を上げることができるだろう。

今、私たちはただ単に引き締まったカラダや健康的な肉体を求めるのではなく、動きの良さが所作に繋がり、また、自分自身を表現する大切な要素になってきている。アスリートのトレーニング強度を一般人へ変換させながら導入することは、現代社会のフィットネスの定義をまさにコンプリートしているものではないだろうか?
ケビン山崎がこのメソッドを日本中に広げたい。そんな志を我々に身をもって教えてくれる日もそう遠くはないと思う。








2024年01月25日

SprintのためのTraining

ケビン山崎がパーソナル・トレーニングを日本に持ち込み、トレーニング・ジム「TOTAL Workout」を東京に設立してから23年が経つ。その間トレーニング結果として多くの人がなりたいカラダを手に入れてきた。

当時ジムに来る人は、『痩せたい』『筋肉をつけたい』といった体型に関するトレーニング結果を求めていた。そしてウエイト・トレーニングと食生活の改善、正しいボディケアを施すことで、短期間でそれを手にすることができた。
時を同じくして、ケビンは常にアスリートに求められるパフォーマンス向上のためにトレーニングを提供していたこともあり、ジムに来る一般の人達においても、ただ体型の変化を得るだけではなく、つくった筋肉を動かせるようになっていった。例えるなら、座っている姿勢、立ち姿が整い、カッコよい歩き方などを習得できる。時代が画像から動画へ変化する今、やっとこの「動き」の美しさこそが、男女を問わず「かっこいい」の定義になったのではないだろうか?

以前のNEWS/TOPICSでも紹介したように、ケビンは随分前からこの動きにこだわりを持っていた。つまり、トレーニングをする最終ゴールは体型という器をつくるだけではなく、動きを取り入れることにある。それを『神経系トレーニング』で可能にしたのだ。

『神経系トレーニング』とは2つ以上の筋肉を順番に連動させることだ。中でもケビンはSprintに目を付けた。運動の中で最も強度が高い動きであり、これまでの人生においてほとんどの人が体験したことのある動きであるからだ。Sprintがうまくなることで、神経系は進化する。

今回は、そのSprintの動きをより良くするために活用される2種類のトレーニングについて述べたい。





【 ピラティス 】

1つはピラティスだ。『TOTAL Workout』にはオリジナルのピラティスがあり、リフォーマー、キャデラックという器具を用いて機能解剖学の見解からカラダの使い方や背骨を動かし、姿勢改善、カラダの中心軸をつくることを行うトレーニングである。
リフォーマーはスプリングを使用することで負荷の調整を行い、マットは自体重での負荷調整、キャデラックはアプローチの変化による負荷調整が行える。これらは、ケビンが提唱するSprint(ダッシュ)においても、必要なインナーマッスル(下腹部、内転筋、腸腰筋、菱形筋、腹斜筋)をレベルに応じてアプローチしていき、最終的には総動員させてカラダをダイナミックに動かすことを可能にしている。

代表的な種目は下記の2つだ。


トゥ・シングルレッグ


Sprintで必要なグルーとのプッシュから腸腰筋で引き上げる動きを、リフォーマーの台を使用することで腹横筋の意識を高め、スプリングが母指球でプッシュする感覚を高めてくれるため、この2つ以上の筋肉を連動させて使う練習が容易となる。



ロールアップ・シングルレッグ with ワンハンドロウ


Sprintの際に下半身から上半身を連動させるために必要な筋肉をリフォーマー上でスプリングという負荷を用いることで、腸腰筋の意識を高め、上半身では腰方形筋を働かせつつ菱形筋で引く練習が容易となる。




【 ヨガ 】

もう1つはヨガ。ヨガは本来静止したポーズ(アーサナ)をとることで、心を整える修業としても用いられる。Sprintのトレーニングを底上げしてくれる柔軟性やバランス力、集中力を養う。ケビンはこれをただの底上げではなく特徴を活かし、Sprintのトレーニングにおけるウォーミングアップの最適形にした。

代表的な種目は次になるが、Sprintで使用する筋肉の可動域を集中的に広げるとともに、アーサナを止まらず取り入れ、動きをつなげていくことによってしなやかな動きをつくり出し、これから取り組むSprintのウォーミングアップになる。


ハーフムーン ポーズ


Sprintの動きでは股関節内外旋など3Dの動きが必要になってくる。このアーサナはSprintにおける一瞬の動きを抜き出し、股関節の内外旋を意識的に行いながらバランスをとることで、より走りで必要な筋肉の意識付けと安定感が高まる。



シングルレッグエクステンション


Sprintの動きで地面をプッシュする際に臀部を使うが、臀部を上手く使えない原因は骨盤の前傾にある。ヨガのアーサナで骨盤の後傾を保ったまま臀部に刺激を入れ、臀部を使ったプッシュの意識付けを行う。





ピラティスやヨガ、それぞれのトレーニングの特性を最大限に活かし、Sprintに特化した役割を持つものへ変化させることは、最短で最大の結果を求めるケビンらしいメソッドだと感じた。
目的に向かって効率の良さを見出せるのも、長年積み上げた知識とエビデンスに基づくものであって、トレーニングは流行りや人気ではなく、欲しい結果に向けて何をアレンジしていくか?が正解なのだと思う。


ケビン山崎はフィジカルを高めることを何よりも得意とするパーソナル・トレーナーだ。しかし、それはただ単に筋力を高めることや、アジリティ、パワーなどに特化したものではない。それぞれのスポーツに応じたトレーニングと、その選手に合わせてカスタマイズが施された唯一無二のものだ。

例えば、記憶に新しいSASUKEにおける武尊選手のトレーニングは、SASUKEという競技に適したフィジカルトレーニングを提供する。筋力ではなく、パワーエンデュアランスが必要になるこの競技では、UCTをメインに行う。

UCTとはアルティメットコンバイントレーニングの略で、強度が高い最強トレーニングの組み合わせを意味する。このトレーニングは、以前から武尊選手が必ずといってよいほど取り入れていた。格闘技は心拍が乱れた環境下で、最大のパワーを出す必要があるためだ。とケビンは説明してくれた。

より試合に近い状況をトレーニングにおいてつくることで、心肺機能の向上やパワーを引き出すことができるという。SASUKEにおいても様々な環境下でパワーを出す必要があり、UCTはすべてを網羅しているトレーニングだ。

今回は、トレーニングの内容を少し紹介することにしよう。




● STT(スーパー・トレッドミルトレーニング)
「スーパー・トレッドミル」を使用し、坂道をダッシュするときのカラダの使い方を学ぶことで、脳から筋肉への指令を出す神経伝達経路を良くし、2つ以上の筋肉を順番に使う能力(連動)を向上し、キレのある動きや爆発的な瞬発力を生み出すトレーニング。武尊選手はその中で最も強度の高いChris Carterを行っている。





● マルチヒップ(ハイニー、キックバック)
内転・外転筋、腸腰筋、大臀筋の強化および意識付けを重さが邪魔する環境下で行う。フォームの安定感を生み出し、ダッシュ時の爆発的な脚の引き上げ、地面を蹴る力を向上させるトレーニング。

・ハイニー
爆発的な脚の引き上げを向上させるトレーニング。
・キックバック
爆発的な地面を蹴る力を向上させるトレーニング。





● カーブ・トレッドミル
ダッシュの最高速度を上げるトレーニング。
トップスピード(MAX約30㎞/h)で3秒×5本





● ラダー、ミニハードル、ハードルジャンプ、ボックスジャンプ
複数の種目を組み合わせたクイックネスを向上させるトレーニング。武尊選手の場合、強度を上げるために4つを組み合わせて行っている。最終種目のボックスジャンプにおいては、さらに強度を上げるために、通常2段で行うところを3段にしてレベルを上げている。





● MHJP(マルチヒップジョイントボード)を使用したトレーニング
四肢の連動性を高めるトレーニング。両手両足をタイミングよく動かすことによって、最大限のスピードとパワーを手に入れることができる。





● Versa Pulley
VersaPulleyは Force(力)とVelocity(速度)を組み合わせたResistance(抵抗)を利用し、パワーにおける神経系の向上を可能にするトレーニングマシン。パワーにおける神経系を効果的に向上させることができる。動作ごとに出したパワーが数値として可視化されるため、1回の出力に全力を注ぐことができる。また、このトレーニングでは前後左右の出力を向上させることができる。





● プルアップ(プルアップ3カインズ プルアップ&クラップ)
全身を使ったチンニングの種目で、瞬間的な出力の向上。主に上半身強化のために行う。

・プルアップ3カインズ
順手、坂手、ワイド、ナローなどの中から3種類を連続して行う。
・プルアップ&クラップ
カラダが持ち上がったタイミングで手を叩く。背中だけでなく全身を使わないとできない強度の高い種目。





● Abdominal Circuit
パフォーマンスに直結する腹筋出力の向上。最も強度の高いCOREのトレーニング。








東京都内にあるトレーニング・ジム 「トータル・ワークアウト」を覗くと、多くの人が熱心にカラダを鍛えている。
トレーニング・ジムという名の通り、それぞれがパーソナル・トレーナーと共に、しっかりとトレーニングに向き合う姿勢が特徴的だ。

ケビン山崎が日本に「トータル・ワークアウト」を設立したのが2001年。それ以来、進化し続けるトレーニングは今や3450通りにもなるという。

そのトレーニングを一つ残らず落とすことなく技術として身につけ、日夜お客様に伝え、指導しているのが、トータル・ワークアウトのパーソナル・トレーナーだ。
彼らは、入社した時から決められたカリキュラムの元、トレーナー研修を受講する。中には、自分自身のカラダの変化を評価される「3週間トレーニング」の実施もある。とにかくこの期間はひたすらトレーニングと食生活の改善を行う。
自分自身の体験を元に指導するトレーニングは、何と言っても説得力がある。そして、指導経験を重ねていくトレーナー達は、3年間で一通りのトレーニングを学び、指導許可をもらえるよう取り組む。
3年以降もブラッシュアップや進化したトレーニングをケビンが直接指導する「パーソナル・トレーナー養成講座」として学び続ける。

習得が難しいもの、指導が困難なものも多くある。さぞかし緊張感があるだろうと覚悟してその様子を見学させてもらうことになった。
この日はベーシックなカラダの使い方を学ぶ日だった。






クイックリフトといって、2つ以上の筋肉を順番に使う、神経系のリフティングだ。高重量のおもりをただ挙上するために必死になるのとは違っていて、筋肉の使い方にこだわったリフティングだった。

そこにいるトレーナー達はみんな楽しそうだった。ああでもない、こうでもないと意見を交わしながら練習をしている。誰かが「今日はここまでにしよう」と言わなければ永遠に行っていそうなくらい。彼らはトレーニングが好きなんだなと一目でわかった。

きっと職業になるといろんなことが起きて、たくさんの気持ちになるだろう。それでも、彼等の根底には「トレーニングが好きである」ということが存在しているのだろう。
そして、こんなトレーナーにカラダを診てもらえるお客様と呼ばれる生徒たちは幸せだろうなと思った。

ケビンが今回パーソナル・トレーナーのみんなに伝授していたトレーニング内容は、素人の自分が聞いていても、面白く、非常に興味がもてるものだった。中でも印象に残ったのは「すべてのスポーツに適用できるパフォーマンス向上の施策」だ。

これはまた、次の機会に詳しく説明することにしよう。








我々日本人が「パーソナル・トレーナー」という言葉を耳にしたのはいつのことだろう?
それはまだ「ボディメイク」という言葉も聞きなれない時代、「肉体改造をマンツーマンで行うトレーナー」がいるというのを知った頃だ。 

遡ること20数年前…。 現代のようにインターネットがまだ情報収集の主流になく、伝える手段がマスメディアのTVや雑誌、新聞だった頃、ケビン山崎はここ日本にパーソナル・トレーニング・ジム 「TOTAL Workout」を設立した。
それ以来、スポーツ選手や著名人を皮切りに多くの人たちがジムへ通うようになり、今や日常的にその重要性までが理解されるようになった。一種の社会現象とも言えるであろう。

この環境の中心にいるのは、あくまでもトレーニングを実施する人であることは間違いないが、常に隣で結果を導き、サポートする役目を担う「パーソナル・トレーナー」の存在があった。
ケビン自身もパーソナル・トレーナーとして活躍の場を広げ、ジムには多くの弟子達が集い、日本一のパーソナル・トレーニング・ジムを築いていった。
カラダの変え方をこれといって知らない日本人にとって、ケビンが打ち出したカラダづくりは実に画期的なものだった。年月とともにカラダづくりが多くの人に浸透し、日常的なものになりつつある現在、その手法は「TOTAL Workout」のメソッドひとつだけではなくなった。

そもそも、カラダづくりを含むフィットネスというものは、健康な人が取り組むものであることが定義なので、やや不調があったとしても病気にカテゴリーされない限り、医師の処方箋が必要ではない。
そのことからも、フィットネス業界に存在する「パーソナル・トレーナー」には国家資格がない。つまり誰でもなれるということだ。カラダづくりの専門家であるはずの「パーソナル・トレーナー」の地位向上が実現しないのも納得できる。
ただ、果たしてそれでよいのだろうか?

人生100年時代と言われる今だからこそ、人生をどう生きるか、ということはとても大事になってくる。切っても切れないのが「健康」だ。
病気じゃないから良しとする時代はとっくの昔に終了し、今となっては質の高い毎日を積み上げていく人生がスタンダードになろうとしている。パーソナル・トレーナーはそれを一人でも多くの方に届けることだと思う。ケビンは強くそのことを訴えてきた人だ。

そんなケビンは、1994年より指導者の教育に着手してきた。
日本人の体育学部を専攻している学生たちに将来の職業として「パーソナル・トレーナー」の存在を伝え、研修を始めた。
東京にトレーニング・ジムを設立して以降、2016年には満を持して日本体育大学とパートナーシップを結び、パーソナル・トレーナーの養成講座を開講した。コロナ禍で一時休講を余儀なくされたが、トータル・ワークアウトのパーソナル・トレーナーは研修という形で、以前と変わらず講義を受講することができる。

日々クライアントと実践する時間はもちろん大切ではある。しかし、こうして理論を学びトレーナー自身が成長し続ける環境があるというのは、ジムへ通う人々にとって安心を得られることだろう。
そのときの感覚や感情でトレーニングを組み立てるのではなく、しっかりとした理論とエビデンスのもと、「効率の良さ」を徹底して学ぶ。
そんなトータル・ワークアウトのパーソナル・トレーナーは質が良い。
そう言われる理由はここにあるのだろう。











今回は、前回に引き続き新しいプログラム STRIKE ARTS PROGRAM 【3D】 について詳しく説明することにしよう。

このプログラムは格闘技において、パンチとキックという大きく分けて2つの攻撃を元に構成されている。

このプログラムの開発者ケビン山崎は言う。「プロのアスリートが無意識にコントロールしている多くの技術をバイオメカニクス的に解説し、それを理解することで、一般の方やアマチュアのアスリートたちにも広く役立つことがあります。もちろんそれはプロのアスリートも例外ではなく、スランプに陥った際、回復への糸口となることは間違いありません。股関節のローテーションにおいて、インナーマッスルを正しく作動させることを目的としたメソッド Athlete Body Make Program をベースとし、格闘技におけるパンチとキックに応用させたSTRIKE ARTS PROGRAM 【3D】は、それぞれのパワーやキレの向上が期待できます。それだけではなく、野球のピッチングでいう球種に当たるパンチやキックを、変則的なものにできる技術の習得にもつながります」と。

プロアスリートとトレーニングを積み上げてきたケビン山崎ならではの観点から、一般的に健康を目的としてトレーニングジムに来る顧客でも、役立つカラダの使い方を学ぶヒントがここにあるかもしれない。

このプログラムは、下半身の力を上半身にうまく連動させるために、上半身の下部つまりLower Torsoの使い方を分かりやすく導入すること(クランチ)にフォーカスしたプログラムになっている。主に股関節のローテーションをする際に、一旦骨盤を前傾させて内旋筋群と外旋筋群を作動、ほぼ同時に腰方形筋を使ってクランチする(側屈)。その効果が出力される方向に力が行きはじめ、一瞬戻って、また出力されるという小さな動きが入る。これがパワーや安定感、キレにつながり、使い方次第では動きに変則感を与えることが可能になるということだ。

ここからは、パンチではストレートとフック、キックではハイキックを例にして説明しよう。



【パンチ】

Straight/Hook
   ※オーソドックス
Straightをバイオメカニクス的に分析し、筋肉の連動を意識的に行うため、VPX(チューブ)とKnee strapを使用する。これらは、前方への動きをわざと制御し使用部位を意識しやすくするという特徴がある。感覚的にはねばりを感じ取ることが可能。それらで得られるものは、股関節のパワーと安定性の向上になる。
※オーソドックス
Straightをバイオメカニクス的に分析し、筋肉の連動を意識的に行うため、VPX(チューブ)とKnee strapを使用する。これらは、前方への動きをわざと制御し使用部位を意識しやすくするという特徴がある。感覚的にはねばりを感じ取ることが可能。それらで得られるものは、股関節のパワーと安定性の向上になる。

For Power
後方(右)股関節にVPXとKnee strapを装着
後方(右)股関節に重心を乗せ、Lower Torsoをクランチ
後方(右)股関節を内旋筋群によって前傾させ、ほぼ同時に腰方形筋でクランチしながら右股関節で床方向にプッシュ。そして体重を前方(左)股関節に移動し、前方(左)のLower Torsoをクランチさせた力をStraightにつなげる。

For Stability
前方(左)股関節にVPXとKnee strapを装着し内旋/外旋時の使用筋肉意識の向上とプッシュ時にテンションをかける。プッシュの意識をより高めるためには、KOHの使用もおすすめ。この動きが良くなると、動きがタイトかつシャープになる。





【キック】

High Kick
   Sprint Cordを使用。
軸足は床反力を利用し、股関節を外旋させる。軸足側の肩甲骨は外旋、反対側の肩甲骨は内旋させる。蹴る脚の付け根から突き出すようにしてKickをする。※Sprint Cordは斜め下から引っ張るようにする。
Sprint Cordを使用。
軸足は床反力を利用し、股関節を外旋させる。軸足側の肩甲骨は外旋、反対側の肩甲骨は内旋させる。蹴る脚の付け根から突き出すようにしてKickをする。※Sprint Cordは斜め下から引っ張るようにする。

上記のように、パンチとキック時に使用する筋肉を正しく意識することで、パワーアップや安定性、変動的な動きが可能となり、攻撃に幅を持たせることができる。
紹介したのはごく一部だが、自分自身の癖やうまくいかないポイントを解明してもらい、それぞれのエクササイズを行うことで、確実に成長していくことができるだろう。


2023年08月25日

STRIKE ARTS PROGRAM 【3D】

これまでにもケビン山崎はアスリートのトレーニングを一般の人にも推奨してきた。「強度の低いアスリート」として位置づけられた一般の人というカテゴリーは、カラダの使い方を進化させることで、今よりもワンランク上の日常を過ごせるようになるということは言うまでもない。
中でも、自分自身が趣味として続けているスポーツのパフォーマンス向上は分かりやすいベンチマークとなり、同時にやる気を向上させるため、我々のような一般的なスポーツ愛好家としては、トレーニングに取り組む明確な理由が成立する。自分自身のカラダの使い方を理解し、アスリートレベルまでその能力を引き上げたいという考え方になる人も少なくはない。

ケビンのクライアントはトレーニングの特性上、格闘家が多く募るようになった。筋力、瞬発力、持久力、コーディネーションなど高いレベルで全てを必要とする格闘技は、アスリートのみならず、人間の持つフィジカルと直結しているといっても過言ではないだろう。そこでケビンは、長年の経験とプロアスリートのエビデンスからなる『STRIKE ARTS PROGRAM 【3D】』を開発した。全6回というコンパクトなプログラムだが、誰でも受講できるというわけではない。 ケビンが提案する別のプログラムに 『Athlete Body Make Program』というアスリート向けにつくったトレーニングを一般の方へ提供する上級者向けのプログラムがある。この「アスリートボディを目指す」つまりは、カラダの使い方に特化したトレーニングを受講した方に参加の権利があるというのだ。

それでは、『STRIKE ARTS PROGRAM【3D】』について解説しよう。

プログラムの名称に【3D】という言葉が含まれているように、格闘技における動きを3Dにて動作分析することで、基準値と自分との差を明確にし、取り組むべきトレーニングのチョイスに役立てることが目的となる。
このプログラムで得られるトレーニング効果は、パンチとキックにおける打撃力の向上。パンチにおいては、下半身から上半身へ、キックにおいては上半身でいったんつくり出した力を下半身へ戻すという工程を通る。その過程では、骨盤に直結している部分(腰方形筋)を使うことが重要ポイントとなるが、これはカラダを側屈させることでしか実現できない。この動きが見落とされがちだという。

これらの動きを確認するには、立体的な指標でみる必要性がある。平面だと確認することはできない。用いる3D測定器はXsensといって、動きを立体的に可視化して数値化できる。

測定された数値は基準値に比べてどのくらいの差があるのか?を瞬時に解読可能で、トレーニングの方向性を明確にしてくれる。
劣る部分が理解できたら、補強のためにエクササイズを実施する。ケビンは長年ありとあらゆる格闘家とトレーニングを実施してきた。そのエビデンスを元に構築されたパンチとキックそれぞれのドリルは、すべてVPX、shoulder harnessを使用するものとなっている。
6回から成るプログラムの初回と最終回には、プロの格闘家が同席し、動きの確認をしてくれる。よってスキルへの変換をダイレクトに実行可能というわけだ。





次回のTOPIX記事では、より詳しくSTRIKE ARTS PROGRAM 【3D】を解説します。

ここでは前回に引き続き、ケビン山崎が近年のトレーニングを解説し、パーソナル・トレーナーの未来を予測します。

(前回の記事“ケビン山崎が語る 「パーソナル・トレーナーの歴史と未来予想図 ①」”はこちら





【HISTORY(近年におけるムーブメント)】

1990年代半ばのアメリカでは、特に西海岸を中心にNFL/AFCやNBA、MLBなどのスポーツの人気に拍車がかかり、ほかにも格闘技(UFC)も注目を集めるようになりました。そして、これらのスポーツ界において、ウエイト・トレーニングブームがやってきます。
やがて、アスリートたちは増強させた筋肉を持ちながらも優れた動きができるカラダにするために、「神経系トレーニング」を取り入れるようになりました。
しかし、2010年代初めにはそのブームに陰りがみえ始めるという、これまでと同じような現象が繰り返されました。

アメリカのスポーツ界では、その頃からMLBは「Statcast」や「TrackMan」、NFLやNBAもそれぞれ独自のシステムを用いて、ボールや選手の動きを高速かつ高精度に分析する取り組みが始まりました。この動向はさらに加速し、2020年代には選手の動作を3D計測する技術が開発される段階にまで発展しています。



2000年代

スポーツ業界にウエイト・トレーニングが取り入れられる
神経系トレーニングが開発され、導入される







↓ ↓ ↓
2010年代

スポーツ界には、ボールや選手の動きを高速、高精度に分析するソフトが導入される



↓ ↓ ↓
2020年以降

インナーマッスルの研究が始まり、計測も3Dへと進化








【今後の日本におけるフィットネスの展開】

ウエイト・トレーニングだけを行い、アウターマッスルばかりにアプローチしているようでは、もはやこの業界では通用しません。
下半身は下半身だけ、上半身は上半身だけと分けてトレーニングを行うのではなく、下半身から上半身への連動性を高めるトレーニングが重視される時代になっています。
つまり、下半身から上半身への連動や股関節のインナーマッスルの使い方など、インナーマッスルとアウターマッスルの関係性を、より立体的に考えることが重要となっています。

フィットネスにおいても、このような動きが重要であることは容易に想像されます。
単に筋肉を鍛えるだけでは、姿勢を改善したり、躓くのを防いだりすることはできません。実際には、神経伝達を向上させること―― つまり、神経系のトレーニングを行うことで、パフォーマンスが上がるのです。

パフォーマンスの向上は、筋肉量の増加と比べて日々の感覚で確認しにくいため、モチベーションを維持して成果を出すためには、可視化や数値化することが必要です。
そこで役立つソリューションが、動作分析や解析です。これらはトップアスリートだけのものではなく、今や私たちの日常を充実させるための重要なツールになりつつあります。







1980年代のアメリカでは、ハリウッドスターやスポーツ選手などの特別な人が自身の職業のために取り組み始めたカラダづくりが話題を呼び、専属のトレーナーを付ける「パーソナル・トレーニング」が生まれました。
後に私の職業となる「パーソナル・トレーナー」は、その専属のトレーナーを指します。私も自らのカラダづくりを通じて自信を得たり、健康面での恩恵を受けたりすることで、活動の幅が広がったことを実感してきました。

アメリカにおけるフィットネスは、ビジュアルの変化を追求することからスタートしましたが、高額な医療保険制度の後押しもあり、健康産業の大きな柱として花開きました。フィットネスは多くの人々におけるライフスタイルの一端に存在するものとなり、特別なものから日常的なものへと進化を遂げてきたのです。

それは日本でも同様です。2000年にアメリカからパーソナル・トレーニングが上陸し、20年の歳月を経て、一般化するとともにパーソナル・トレーナーという職種が世の中に認知されるようになりました。私が「パーソナル・トレーニング」を日本に持ち込んでから、それが社会現象として定着するまでにはそれほど時間はかかりませんでした。カラダづくりに取り組む人が増え、健康志向が高まる中で、今なおパーソナル・トレーナーの数は増加し続けています。
しかし、一方で対象とするクライアント(顧客)が健常者であることから、パーソナル・トレーナーは専門家としての資格を持たずとも、その指導に携わることができます。そのため、パーソナル・トレーナーは、個人の意思次第で職業として成り立っているというのが現状です。

フィットネスの先進国といわれるアメリカは、日本よりも約10年先を行っているとされてきました。しかし、私の見解では、今やその差は3~5年程度に縮まっていると思います。方向性は間違っていなかったといえるでしょう。だからこそ、私たちは今後もアメリカのフィットネスのトレンドを未来予想図として捉えながら、日本に合わせたフィットネスを創り出していきたいと考えています。





【HISTORY(USA)】

アメリカの1970年代といえば、女優のジェーン・フォンダの時代です。1971年の『コールガール』、『帰郷』、『チャイナ・シンドローム』などのヒット映画を連発し、エアロビクスダンスを全米中に広めた第一人者です。当時のウエイト・トレーニングといえば、アーノルド・シュワルツェネッガーに代表されるボディビルダーの間でのみ行われるものでした。
しかし、流行は必ず下火になるものであり、1980年に入るやいなやエアロビック・エクササイズは定番化されたものの、その勢いはウエイト・トレーニングの方向へと移っていきました。ウエイト・トレーニングは次第にボディビルダーたちだけのものではなくなり、ハリウッド映画界への進出も手伝って大きく注目され、1990年代半ばには野球やバスケットボールなどのスポーツ界にも広がっていきました。
この頃のハリウッド映画では筋肉系俳優によるアクション作品が非常に人気でした。代表的なものとして、シュワルツェネッガー主演の『ターミネーター』シリーズや『コマンドー』、シルヴェスター・スタローン主演の『ロッキー』シリーズや『ランボー』シリーズなどがあります。このジャンルは1990年代半ばまで盛んでした。


1970年代

空前のエアロビクスブーム
『有酸素運動が主流』


↓ ↓ ↓
1980年~1990年代序盤

ウエイト・トレーニングでMuscle Bodyが人気に
『無酸素運動が主流』










【HISTORY(JAPAN)】

日本のフィットネスシーンでは、1970年代から1980年代にかけてフィットネスクラブの三種の神器といって、どのクラブへ行っても「スタジオ、ウエイト・トレーニング、水泳」の3つが中心でした。1990年代には、その中でもスタジオのエアロビクスダンスが主要なエクササイズとなっていました。 そして2000年に入るやいなや、ウエイト・トレーニングがTOTAL Workoutを中心にブームとなり、野球などのスポーツ界にも大きな影響を与えるようになりました。そこで中心的な存在となったのが「パーソナル・トレーナー」です。


1970年代

三種の神器(スタジオ・ジム・プール)が揃うフィットネスクラブが出現する






↓ ↓ ↓
1990年代

エアロビクスが人気を集める

↓ ↓ ↓
2000年代

ウエイト・トレーニングブームで『パーソナル・トレーニング』がスタート








ケビン山崎が語る 「パーソナル・トレーナーの歴史と未来予想図 ②」 へ続く