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これまで何回かに分けてTOP SHAPE PROGRAMにおける結果を伝えてきた。
受講者の感想を耳にしたケビンは、TOTAL Workoutをスタートした頃に比べると顧客のニーズや求められる結果は大きく変わってきたと言う。
ただ単にカラダのフォルムが好みに構築されるということではなく、自分の人生そのものが豊かであることが多くの人の目的になっている。
人生100年時代。ただ生きるだけでは、その幸福感は満たされなくなった。生きている時間をどう使うか?どう楽しむか?いかにして不安を取り除くか?ということだろう。
「TOP SHAPE PROGRAM」を受講した方からの感想を元に、ケビンにその真意を問う。
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ケビン:TOP SHAPE PROGRAMを受講した人の多くは、これまでは筋肉トレーニングを優先し、食事にも気を付け、見た目の変化を重視して来られました。しかし、今のトレンドは美しさと寿命、そして機能性のバランスをとることへと変化してきたのです。
それらを分析すると重要なポイントが3つあります。自分自身の経験も踏まえた上でお伝えしたいと思います。
❶ 容姿先行
❷ 寿命
❸ 機能性
❶の容姿先行とは、ヘビーなウエイト・トレーニングを優先し、食事に気をつけることで、今の日本で起きていることです。
❷の寿命とは、コンディショニングおよび有酸素のトレーニングで、病院やリハビリ等で推奨しているトレーニングのことです。
❸の機能性を得るためには、インナー・マッスルのトレーニング導入が必須となります。
私はウエイト・トレーニング(ヘビー・ウエイト)が好きで、コンディショニングおよび有酸素系のトレーニングはあまり好みませんでした。その理由は達成感が少なく、せっかく作った筋肉も減少するような気がしたからです。
以前、赤身肉や乳製品、ホエイプロテインを多く摂取していましたが、40代に入ったときに行った血液検査でコレステロール値が高く、動脈硬化の初期症状が見つかりました。そのときの体脂肪率は15%台で、通常のフィットネス指標では問題のないレベルでした。
ここでカラダのことを考えると、それは主に消化器系、循環器系、泌尿器系で構成されています。トレーニングにおいては、ウエイト・トレーニングおよび食事は消化器系に当たり、コンディショニングおよび有酸素系トレーニングは循環器系に依存しています。このことからも循環器系のトレーニングは重要だとわかるでしょう。
赤身肉や全脂肪乳製品等に多く含まれる飽和脂肪酸やトランス脂肪を減らして、食物繊維や質の良いオイルを多く摂取し、コンディショニングおよび有酸素系のトレーニングを行うことで、コレステロール値を低下させることに役立ち、血液検査を受けた際は大きい改善を実感しました。自分の習慣というこんなシンプルなことが命を救う可能性があるなんて興味深かったです。そして機能性のためのトレーニングは、インナー・マッスルを導入することが重要となります。
基本的にインナー・マッスルのトレーニングとは、自分の意思ではコントロールすることが難しい筋肉のトレーニングを指します。それら不随意筋と呼ばれる筋肉は、人間のカラダの中に存在する約640個の筋肉のうち、実に約90%に当たります。もし、その不随意筋の多くを自分の意思で使えるようになるなら、即ち随意筋に変換できるようになるならば夢のような話です。それにチャレンジするトレーニングのことを神経系トレーニングといいます。
ここで、TOP SHAPE PROGRAMのことをもう一度考えてほしいのですが、
❶ 容姿先行
TOP SHAPE PROGRAMは、インターバル・トレーニングの要素を導入したスプリント・トレーニングです。ウエイト・トレーニング同様に無酸素トレーニングなので、筋肉は肥大します。オリンピックで100mの選手のカラダを見れば一目瞭然です。
❷ 長寿
TOP SHAPE PROGRAMは次のような強度のインターバル・トレーニングなので、循環器系のためのトレーニングとして効果的です。
VO₂ Max(ml/kg/min,METS)
男性 40,11METS
女性 35,9.5METS
❸ 機能性
TOP SHAPE PROGRAMはすべてのインナー・マッスルを作動させることができるようにデザインされたプログラムです。また、神経系トレーニングにおいて最大の効果を得るため、無酸素性作業閾値(AT値)付近でトレーニングを行い、トレッドミルのスピードと傾斜でプロトコールを変化させます。
TOP SHAPE PROGRAMを受講された方はトレーニング経験を経て、自分自身と対話することがうまくなりました。トレーニングの進捗を記録することを重視し、定期的に測定された体組成を元に、今後のトレーニング計画をトレーナーと共に話しあう。そのようにして自分のカラダの形や寿命に繋がる健康を手にしていくのですね。
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ケビン山﨑が語ってくれたことを総括すると、正しいトレーニングを実施することで、カラダもココロも健全で豊かになれるということなのだろう。
少しでも長く、そんな心地よい毎日が続くように「TOP SHAPE PROGRAM」は存在し続ける。
TOP SHAPE PROGRAM、2週間、5回(1回、1時間)を対象者14人に実施しました。
食事制限有り【7人】、食事制限無し【普段通り(7人)】
結果
食事制限有り | ||
---|---|---|
体重 | -3㎏ | |
体脂肪率 | -2% | |
ウエスト | -3㎝ |
食事制限無し(普段通り) | ||
---|---|---|
体重 | -1.5㎏ | |
体脂肪率 | -1.1% | |
ウエスト | -0.5㎝ |
効果
・ | ウエストが引き締まり、脚のシルエットが良くなった。 | |
・ | ストライド幅が増え、より速い速度で走れるようになった。 | |
・ | より多くの筋肉を意識して走るので、頭が疲れた。 | |
・ | カラダの使い方を学べて良かった。 | |
・ | カラダが活性化した。 | |
・ | トレーニング効果の持続性が圧倒的に長い | |
トレーニング内容
TOP SHAPE PROGRAMは通常のスプリント・トレーニングに、すべてのインナー・マッスルを作動させることにより、より効果的に無酸素性作業閾値(AT、Anaerobic threshold)へ到達できます。それによってより効果的そして速く、最大酸素摂取量(Vo2max)を増大させることができます。最大酸素摂取量は運動能力の指標で心肺体力とも呼ばれています。
参加者の感想
・ | 心とカラダは一つしかないから、それを大切にすべきだと感じた。 | |
・ | 体格だけではなく、長寿も念頭に置きながら健康に取り組んでいこうと思った。 | |
・ | 筋力トレーニングを重視し、見た目を重視してきたが、カラダの使い方を学ぶことと、食事を今一度徹底することで、カラダの中から健康になれると改めて感じた。 | |
・ | 自分のトレーニングの進捗を数値化し、記録することを重視するようになった。 | |
・ | いかにアウターマッスルでダッシュしていたか?ということがわかった。動きの中でインナー・マッスルを意識することで、シェイプアップに効果的な走り方に繋がることを知った。 | |
スプリント・メカニズムの原点はパワークリーンの原点にある。即ち、パワークリーンが上達すれば、スプリント・トレーニングの効果も向上する。
パワークリーンの基本的メカニズムとはトリプルエクステンションと言い、股関節、膝関節、そして足関節を通してより多くのパワーを生むことを意味する。
足関節自体には、エネルギーを生む筋肉の作用はなく、基本的に股関節が足関節をコントロールするので、底圧の設置状態を向上させることで、地面から得る床反力も向上し、股関節からのパワー出力も増大する。その結果、スプリント時でのパワー増大につながる。
次にスプリント時における足関節の動き(捻り)を理解することが最終的なパフォーマンスの向上に直結するので、ここで解説しておこう。
歩行時、走行時に唯一カラダが外部とコンタクトするのは足(カラダ)と地面(外部)である。主に足は下腿と呼ばれ、脛骨、腓骨と距骨から構成された距腿関節(図1:赤)と、距骨と踵骨から構成された距骨下関節(図1:青)とが動き合うことで足首を内側、外側に曲げたりする動きに対応したり、足首を回すなど複雑な動作を安定して行える。
(図1)
距腿関節で起こる運動は底屈(屈曲)と背屈(伸展)、距骨下関節で起こる運動は外転、内転、回外、回内である。歩行、走行時の場合、もう一つ重要な関節があり、それはリスフラン関節と言い(図2:緑)、5本の中足骨と足の甲の間にあるアーチ状の関節で歩行、走行時の着陸(踵骨)後、外側、縦アーチで起こる回外運動及び離陸時において内側縦アーチで起こる回内運動に重要な役割を果たす。即ちリスフラン関節における「ねじれ」によって距腿関節が正常な位置を保つことができ、離陸時により多くのパワーを生むことを可能にする。
歩行、走行
着陸(踵骨)→ 回外(外側縦アーチ)→ 小趾球 → 中足骨(横アーチ)→ 拇趾球 → 回内(内側縦アーチ)→ 離陸
(図2)
【参考】
足関節の回内、回外のストレッチをスプリントの前にすることで、足のプロネーター、スピネーターの状態をノーマルにできる。
CPEI(Center of Pressure Excursion Index)
CPEI =
圧力の中心
x 100
足幅
足をプロネーター、ノーマル、スピネーターに分類するパラメーター
男性 ノーマル (10.3 ~ 23.4)
女性 ノーマル (6.2 ~ 19.2)
【例】
回内/回外ストレッチ Before → After
男性
23.1(スピネーション)→ 13.5(ノーマル)
24.6(スピネーション)→ 12.6(ノーマル)
女性
0.4 (プロネーション)→ 11.0(ノーマル)
前回は「カラダを股関節に乗せる」ことによって、股関節がより明確な支点となり、スプリント時により多くのエネルギー(代謝)を生むことができる。ということをWalking、Running、そしてSlope Dashを比べながら説明しました。
(前回記事のリンクはこちら)
今回は、その下半身のエネルギーの移行先である上半身、すなわち肩甲骨、そして広背筋の説明をします。SPRINT時において大きな力の流れは、例えば股関節(右)の屈曲を始動と考えるならば、
① 股関節(右)の屈曲、外旋 × 肩甲骨(右)の伸展、内旋
×
② 股関節(左)の伸展、内旋 × 肩甲骨(左)の屈曲、外旋
「×」はねじれ

次の③④は股関節(左)における屈曲の状態です。
③ 股関節(左)の屈曲、外旋 × 肩甲骨(左)の伸展、内旋
×
④ 股関節(右)の伸展、内旋 × 肩甲骨(右)の屈曲、外旋
「×」はねじれ
①~④を繰り返すことによって下半身、上半身による最大限の「ねじれ」を生み、その力を広背筋に伝えることができます。

(全てのラインが順次にねじれる)
通常のスプリントでは単に肩の伸展運動だけで広背筋を収縮させ、エネルギーを生むため、インナー・マッスルからのエネルギーを得ることはできません。
しかし、TOP SHAPE PROGRAMでは、肩甲骨内にあるインナー・マッスルの生むエネルギーが肩の伸展運動に足されるので、より大きな力で広背筋を収縮させることができ、その肩甲骨の内/外旋の動きが主力の下半身と上半身でつくるエネルギーをより増幅させ、最大限に引き出します。
これまでにも、ケビン山崎は自身の研究結果としてウエイト・トレーニングと食事制限で代謝を向上させるトレーニングプログラムから、神経系を用いたスプリント・トレーニングと食事制限の組み合わせで、より短期間での肉体改造を示唆してきた。中でもTOP SHAPE PROGRAMは、2週間、5回(1回1時間)で劇的にカラダに変化をもたらすと提唱してきた。
そのTOP SHAPE PROGRAMが、このたび進化したということで概要を聞いてみた。
代謝を向上させることにフューチャーした今回のTOP SHAPE PROGRAMは、これまで不可能(難しい)とされていたインナー・マッスルを使って代謝を上げることを可能にしたプログラムだ。このプログラムはインナー・マッスル(50%)+アウター・マッスル(50%)による100%の筋肉を使って代謝を上げられる。
スプリントバイオメカニクスにおけるHip Flexion(70度)、Hip Extension(20度)により早く到達するためには、「カラダを股関節に乗せる」という考え方が非常に重要となるらしい。
そこでWalking、Running、そしてSlope Dashを比べてみることにしよう。
Walking
① 股関節の屈曲(足を前に出す)
腸腰筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋、内転筋群
② 着陸(踵が地面に着陸)
大殿筋、中殿筋、重心は後ろ足の股関節に乗っている
③ カラダが股関節に乗る
④ 母指球で地面をプッシュして離陸する
カラダは股関節に乗せることはできるが浅いので、内転筋群を使って内旋筋群をつくるまでは到達しない
Running
① 股関節の屈曲
Walkingと同様だがストライドが大きいため、より多くの筋量を使う
② 外旋着陸
大殿筋、中殿筋、深層外旋六筋群
③ カラダが股関節に乗る
②と③はほぼ同時
④ 母指球で地面をプッシュし、内転筋群と内旋させ離陸(内旋離陸)する
Slope Dash
Runと比べて全ての工程は同様だが、より強度の高いものとなる
したがってSlope Dashが成立することによって、より多くの代謝を上げることになる
フィットネスにおけるトレーニングの目的とは?
長年のキャリアを積み上げてきたケビン山崎は「代謝を上げること」だと言う。
痩せたい人、筋肉をつけてカラダを大きくしたい人、パフォーマンスを上げたい人、健康増進を目的とした人。それらはすべて、代謝が上がると手に入る。言い換えてみると、どんな種類のなりたいカラダも、フィットネスの中では代謝を上げることに繋がっている。
そもそも代謝とは、体外から取り入れた栄養素を分解し、吸収された栄養素をカラダの必要な物質に再合成することだ。基礎代謝や新陳代謝、エネルギー代謝などさまざまな代謝があるが、それらが活性化するためにはいくつかの手段がある。その中でも筋肉トレーニングは最も効率良く代謝機能を向上させることができる。
ケビンは、さらにそれらを深く掘り下げ、筋肉の使う量、使い方、意識の仕方によっても代謝機能の効率に格差が出ることを証明した。その手段を徹底的に研究し、最も代謝を上げることに繋がるトレーニングを編み出したのが『Over-All Muscle Training』だ。
手段
● ウエイト・トレーニング
アウター・マッスル(随意筋)を利用して、直接的に代謝を上げる。動きがそこまで複雑ではなく、短時間で効果を実感できることから、多くの人が実践している方法で代謝を上げることが可能。
<代謝 ★★>
● インナー・マッスル・エクササイズ
インナー・マッスルを使ったスタティックなエクササイズ (主にリハビリテーション)のことで、セラバンドをメインで使用するエクササイズ。これだけではなかなか代謝を上げることができない。
<代謝 ☆>
● 神経系トレーニング
インナー・マッスルを主導として、全身を動かすためのトレーニング。インナー・マッスルだけを動かすエクササイズとは異なり、全身を動かすことで大きくはないが、代謝を上げることが可能。
<代謝 ★(種目による)>
● スピード・トレーニング
スプリント・トレーニングに神経系トレーニングを導入したトレーニング。主に下半身から上半身へパワーの連動性に特化したトレーニング。ウエイト・トレーニングで代謝を上げるために要する期間を3週間と定めた場合、このトレーニングでは、2週間で同等の成果を得られた(Top Shape Programで実証済み)。
<代謝 ★★>
● Over-All Muscle Training
全てのインナー・マッスルを同時に作動させてアウター・マッスルに繋げるので、全てのアウター・マッスルも同時に作動できる。対象種目はスプリント・トレーニング。
<代謝 ★★★>
● Athlete Body Make Program(ABMP)
ある動作を最大出力にするために、正しい過程を導くプログラム(ABMPはトレーニングではない)。Over-All Muscle Trainingとセットで行う。
今回は、ケビンがインナー・マッスルの役割を解説してくれたものをまとめた。
筋肉が活動するとき、血中から脂肪酸、酸素(O₂)、グルコース(糖質)などが筋肉内に入り、その活動を続行することができる。例えば、有酸素運動をするときは、主に血中から脂肪酸、酸素(O₂)が筋肉内に誘導され有酸素運動を続けることができる。またウエイト・リフティングなどのときは、主にグルコース(糖質)、酸素(O₂)が筋肉内に誘導され、その動作を続けることができる。
そして、その活動を定期的に続けることで、【図1】のように脂肪酸、酸素(O₂)、グルコース(糖質)などを筋肉内により多く取り入れるのを可能にする酵素(タンパク質)が成長し、その活動をより長く、強く続けられる。
筋肉にはインナー・マッスル/アウター・マッスルの2種類がある。その体積(重量)の比率は1:1で、総数640個に対して、インナー・マッスル:アウター・マッスルは9:1(すなわち576:64)となる。
筋肉
代謝
一つひとつのインナー・マッスルに対するトレーニングはほとんど効果が無く、アウター・マッスルに対するウエイト・トレーニングが重要な役割を果たす。
通常のインナー・マッスル・トレーニングでは筋肉のサイズが小さいため、代謝を上げることはできないが、アウター・マッスル・トレーニングは筋肉のサイズが大きいため、効率良く代謝を上げることができる。【図2】
では、どのようにすれば、インナー・マッスルを使って代謝を上げることができるのだろうか?
インナー・マッスルの特性として、一つひとつの筋肉のサイズは小さいが、たくさんあるということ(筋肉の総数のうち90%がインナー・マッスル)が挙げられる。そして、それを可能にしてくれるトレーニングが神経系トレーニングだ。
神経系トレーニング
神経系トレーニングとは、すべてのインナー・マッスル(576個)を同時に作動させてアウター・マッスルへ繋げるので、すべてのアウター・マッスル(64個)も同時に作動できる。
フィットネスにおいては、現状スプリントが唯一の種目となる。
「日本のフィットネスには欠けているものが1つあります」
そう語るのは、日本のフィットネスを変えたと言っても過言ではない、パーソナル・トレーナー ケビン山崎だ。ケビンは自身が1981年にパーソナル・トレーナーとして活動をはじめ、多くのトップアスリートを手掛け、その経験を一般人と呼ばれる強度の低いアスリートにも活用できるメソッドを構築していった。
そのケビンが今、満を持して伝えるのが、フィットネスのあるべき姿だ。
以下、ケビンの言葉を借りて説明しよう。
「フィットネス」つまり、カラダの代謝を上げるためにトレーニングをすることをいかに効率よく、最大の結果へつなげるか、が重要なポイントとなる。全身を連動させながらトレーニングすることで、より多くの代謝を生み、その結果として脂肪燃焼を起こすことができる。通常のトレーニングは、各部位のアウターマッスル中心のトレーニングを組み合わせたものがほとんどで、全身を同時に連動させるトレーニングと比べて効率良く代謝を上げることは困難なため、脂肪燃焼効率も低くなる。
ここで言う、全身を連動させることとは、力の流れの始まりは母趾球であり、その力を股関節のインナーマッスルに繋げ、その力をさらに肩甲骨のインナーマッスルへと連動させる。そしてそのカラダの内側にあるインナーマッスルの力を外側のアウターマッスルに連動させ、パワーに変換させる。というわけだ。
そこで、身体運動の連動性を考えた場合、股関節の独立性が重要となる。股関節の独立性とは、左右の股関節をスクワット・エクササイズのように同時に使うのではなく、左右別々に使うということだ。すなわち股関節の独立性とは、左右の母趾球の独立性を意味する。その結果、トレッドミル・エクササイズが最適なものであると言える。
トレッドミル・エクササイズ
トレッドミルを使用したエクササイズは、スプリント/ダッシュを意味する。では、なぜスプリント/ダッシュが重要なのだろうか? 引き続きケビンの話を元に解説してみよう。
ジョギングをする目的は健康管理であると大抵の人たちは思う。しかし、スプリント/ダッシュとなると、一般の人たちにとって何の目的に実施するのか明確ではなく、また、あまり実施している姿を目にする機会もない。
例えば、スポーツの世界で、スプリント/ダッシュというと、主に神経系トレーニングを意味する。神経系トレーニングとは、より多くの不随筋であるインナーマッスルをカラダの動作に導入させ、随意筋であるアウターマッスルと合わせてその動作のパワー・アップ、そしてキレ等を向上させることだ。
不随意筋の代表格である大腰筋/腸骨筋を向上させるためには、スプリント/ダッシュ・トレーニングが最適であり、坂道で行うことでより強度は増す。一般の人たちも、この神経系トレーニングとしてのスプリント/ダッシュ・トレーニングを導入することで、ゴルフなどのスポーツ分野だけでなく、日常生活にも大きな影響を与え、代謝を上げることに繋がる。またそれに加え、動作に対する判断力やキレも向上し、人生の密度を上げることができるだろう。
今、私たちはただ単に引き締まったカラダや健康的な肉体を求めるのではなく、動きの良さが所作に繋がり、また、自分自身を表現する大切な要素になってきている。アスリートのトレーニング強度を一般人へ変換させながら導入することは、現代社会のフィットネスの定義をまさにコンプリートしているものではないだろうか?
ケビン山崎がこのメソッドを日本中に広げたい。そんな志を我々に身をもって教えてくれる日もそう遠くはないと思う。
ケビン山崎がパーソナル・トレーニングを日本に持ち込み、トレーニング・ジム「TOTAL Workout」を東京に設立してから23年が経つ。その間トレーニング結果として多くの人がなりたいカラダを手に入れてきた。
当時ジムに来る人は、『痩せたい』『筋肉をつけたい』といった体型に関するトレーニング結果を求めていた。そしてウエイト・トレーニングと食生活の改善、正しいボディケアを施すことで、短期間でそれを手にすることができた。
時を同じくして、ケビンは常にアスリートに求められるパフォーマンス向上のためにトレーニングを提供していたこともあり、ジムに来る一般の人達においても、ただ体型の変化を得るだけではなく、つくった筋肉を動かせるようになっていった。例えるなら、座っている姿勢、立ち姿が整い、カッコよい歩き方などを習得できる。時代が画像から動画へ変化する今、やっとこの「動き」の美しさこそが、男女を問わず「かっこいい」の定義になったのではないだろうか?
以前のNEWS/TOPICSでも紹介したように、ケビンは随分前からこの動きにこだわりを持っていた。つまり、トレーニングをする最終ゴールは体型という器をつくるだけではなく、動きを取り入れることにある。それを『神経系トレーニング』で可能にしたのだ。
『神経系トレーニング』とは2つ以上の筋肉を順番に連動させることだ。中でもケビンはSprintに目を付けた。運動の中で最も強度が高い動きであり、これまでの人生においてほとんどの人が体験したことのある動きであるからだ。Sprintがうまくなることで、神経系は進化する。
今回は、そのSprintの動きをより良くするために活用される2種類のトレーニングについて述べたい。
【 ピラティス 】
1つはピラティスだ。『TOTAL Workout』にはオリジナルのピラティスがあり、リフォーマー、キャデラックという器具を用いて機能解剖学の見解からカラダの使い方や背骨を動かし、姿勢改善、カラダの中心軸をつくることを行うトレーニングである。
リフォーマーはスプリングを使用することで負荷の調整を行い、マットは自体重での負荷調整、キャデラックはアプローチの変化による負荷調整が行える。これらは、ケビンが提唱するSprint(ダッシュ)においても、必要なインナーマッスル(下腹部、内転筋、腸腰筋、菱形筋、腹斜筋)をレベルに応じてアプローチしていき、最終的には総動員させてカラダをダイナミックに動かすことを可能にしている。
代表的な種目は下記の2つだ。
トゥ・シングルレッグ

Sprintで必要なグルーとのプッシュから腸腰筋で引き上げる動きを、リフォーマーの台を使用することで腹横筋の意識を高め、スプリングが母指球でプッシュする感覚を高めてくれるため、この2つ以上の筋肉を連動させて使う練習が容易となる。
ロールアップ・シングルレッグ with ワンハンドロウ

Sprintの際に下半身から上半身を連動させるために必要な筋肉をリフォーマー上でスプリングという負荷を用いることで、腸腰筋の意識を高め、上半身では腰方形筋を働かせつつ菱形筋で引く練習が容易となる。
【 ヨガ 】
もう1つはヨガ。ヨガは本来静止したポーズ(アーサナ)をとることで、心を整える修業としても用いられる。Sprintのトレーニングを底上げしてくれる柔軟性やバランス力、集中力を養う。ケビンはこれをただの底上げではなく特徴を活かし、Sprintのトレーニングにおけるウォーミングアップの最適形にした。
代表的な種目は次になるが、Sprintで使用する筋肉の可動域を集中的に広げるとともに、アーサナを止まらず取り入れ、動きをつなげていくことによってしなやかな動きをつくり出し、これから取り組むSprintのウォーミングアップになる。
ハーフムーン ポーズ

Sprintの動きでは股関節内外旋など3Dの動きが必要になってくる。このアーサナはSprintにおける一瞬の動きを抜き出し、股関節の内外旋を意識的に行いながらバランスをとることで、より走りで必要な筋肉の意識付けと安定感が高まる。
シングルレッグエクステンション

Sprintの動きで地面をプッシュする際に臀部を使うが、臀部を上手く使えない原因は骨盤の前傾にある。ヨガのアーサナで骨盤の後傾を保ったまま臀部に刺激を入れ、臀部を使ったプッシュの意識付けを行う。
ピラティスやヨガ、それぞれのトレーニングの特性を最大限に活かし、Sprintに特化した役割を持つものへ変化させることは、最短で最大の結果を求めるケビンらしいメソッドだと感じた。
目的に向かって効率の良さを見出せるのも、長年積み上げた知識とエビデンスに基づくものであって、トレーニングは流行りや人気ではなく、欲しい結果に向けて何をアレンジしていくか?が正解なのだと思う。
ケビン山崎はフィジカルを高めることを何よりも得意とするパーソナル・トレーナーだ。しかし、それはただ単に筋力を高めることや、アジリティ、パワーなどに特化したものではない。それぞれのスポーツに応じたトレーニングと、その選手に合わせてカスタマイズが施された唯一無二のものだ。
例えば、記憶に新しいSASUKEにおける武尊選手のトレーニングは、SASUKEという競技に適したフィジカルトレーニングを提供する。筋力ではなく、パワーエンデュアランスが必要になるこの競技では、UCTをメインに行う。
UCTとはアルティメットコンバイントレーニングの略で、強度が高い最強トレーニングの組み合わせを意味する。このトレーニングは、以前から武尊選手が必ずといってよいほど取り入れていた。格闘技は心拍が乱れた環境下で、最大のパワーを出す必要があるためだ。とケビンは説明してくれた。
より試合に近い状況をトレーニングにおいてつくることで、心肺機能の向上やパワーを引き出すことができるという。SASUKEにおいても様々な環境下でパワーを出す必要があり、UCTはすべてを網羅しているトレーニングだ。
今回は、トレーニングの内容を少し紹介することにしよう。
● STT(スーパー・トレッドミルトレーニング)
「スーパー・トレッドミル」を使用し、坂道をダッシュするときのカラダの使い方を学ぶことで、脳から筋肉への指令を出す神経伝達経路を良くし、2つ以上の筋肉を順番に使う能力(連動)を向上し、キレのある動きや爆発的な瞬発力を生み出すトレーニング。武尊選手はその中で最も強度の高いChris Carterを行っている。

● マルチヒップ(ハイニー、キックバック)
内転・外転筋、腸腰筋、大臀筋の強化および意識付けを重さが邪魔する環境下で行う。フォームの安定感を生み出し、ダッシュ時の爆発的な脚の引き上げ、地面を蹴る力を向上させるトレーニング。
・ハイニー
爆発的な脚の引き上げを向上させるトレーニング。
・キックバック
爆発的な地面を蹴る力を向上させるトレーニング。

● カーブ・トレッドミル
ダッシュの最高速度を上げるトレーニング。
トップスピード(MAX約30㎞/h)で3秒×5本

● ラダー、ミニハードル、ハードルジャンプ、ボックスジャンプ
複数の種目を組み合わせたクイックネスを向上させるトレーニング。武尊選手の場合、強度を上げるために4つを組み合わせて行っている。最終種目のボックスジャンプにおいては、さらに強度を上げるために、通常2段で行うところを3段にしてレベルを上げている。

● MHJP(マルチヒップジョイントボード)を使用したトレーニング
四肢の連動性を高めるトレーニング。両手両足をタイミングよく動かすことによって、最大限のスピードとパワーを手に入れることができる。

● Versa Pulley
VersaPulleyは Force(力)とVelocity(速度)を組み合わせたResistance(抵抗)を利用し、パワーにおける神経系の向上を可能にするトレーニングマシン。パワーにおける神経系を効果的に向上させることができる。動作ごとに出したパワーが数値として可視化されるため、1回の出力に全力を注ぐことができる。また、このトレーニングでは前後左右の出力を向上させることができる。

● プルアップ(プルアップ3カインズ プルアップ&クラップ)
全身を使ったチンニングの種目で、瞬間的な出力の向上。主に上半身強化のために行う。
・プルアップ3カインズ
順手、坂手、ワイド、ナローなどの中から3種類を連続して行う。
・プルアップ&クラップ
カラダが持ち上がったタイミングで手を叩く。背中だけでなく全身を使わないとできない強度の高い種目。

● Abdominal Circuit
パフォーマンスに直結する腹筋出力の向上。最も強度の高いCOREのトレーニング。

ARCHIVES
- 047 ケビン山﨑が語る「正しいトレーニングから得られるもの」
- 046 進化したTOP SHAPE PROGRAMの検証/考察
- 045 進化したTOP SHAPE PROGRM③
- 044 進化したTOP SHAPE PROGRM②
- 043 進化したTOP SHAPE PROGRM①
- 042 Over-All Muscle Training
- 041 神経系トレーニング
- 040 ケビン山崎が語る「これからのフィットネス」
- 039 SprintのためのTraining
- 038 スポーツスペシフィック
- 037 パーソナル・トレーナー養成講座 (実技編)
- 036 パーソナル・トレーナー養成講座 (理論編)
- 035 STRIKE ARTS PROGRAM 【3D】 ~Boxing/Kicking編~
- 034 STRIKE ARTS PROGRAM 【3D】
- 033 ケビン山崎が語る 「パーソナル・トレーナーの歴史と未来予想図 ②」
- 032 ケビン山崎が語る 「パーソナル・トレーナーの歴史と未来予想図 ①」
- 031 Personal Trainer Bible
- 030 ケビン山崎が語る「新しいフィットネスとは」②
- 029 ケビン山崎が語る「新しいフィットネスとは」①
- 028 Athlete Body Make Program(ABMP)で得られるもの
- 027 ケビン山崎が語る 「野球人金子千尋」
- 026 3週間でカラダを変える肉体改造メソッド
- 025 GOLF PROGRAM 【3D】
- 024 女子レスリング 金メダリスト 志土地真優 × ケビン山崎
- 023 アスリートのサポート
- 022 フィットネスのための神経系トレーニング
- 021 Athlete Body Make Program(ABMP)
- 020 Personal Trainer Kevin Yamazaki
- 019 MUSCLE BIBLE 筋肉伝道師の最終解答
- 018 向田真優選手×ケビン山崎
- 017 神経系トレーニング ~一般人は強度の低いアスリート~
- 016 安樂智大選手 × ケビン山崎
- 015 トレーニングの進化②
- 014 The 一刀流 ~Propulsion Drive~
- 013 武尊選手進化のカギ
- 012 トレーニングの進化 ①
- 011 トレーニングの進化
- 010 Mr. Steve Swanson
- 009 Athlete Training Report Vol.1
- 008 若返るということ~体内復元~
- 007 ATHLETIC REPUBLIC
- 006 武尊選手×ケビン山崎
- 005 目指せATHLETE BODY
- 004 TOTAL Workout
- 003 最先端のトレーニングとは
- 002 高山勝成選手×ケビン山崎
- 001 挨拶